2026年9月28日、信用取引制度の変更により、銘柄別の信用取引残高が毎営業日公表されるようになりました。

制度変更から10日が経過しましたが、実際に投資判断に役立つ変化はあったのでしょうか。

日々のデータを確認すると、わずか1日で信用買い残が423万株も増加した銘柄がある一方、株価が上昇するなかで信用買い残が大きく減少した銘柄も見つかりました。

今回はソフトバンクグループとフジクラを取り上げ、信用買い残・売り残・出来高・株価を比較し、新制度によって何が見えるようになったのかを検証します。

 

① 信用取引制度変更から10日、何が見えるようになったのか

週次データでは分からなかった日々の変化

2026年9月28日の制度変更では、これまで週次で公表されていた全銘柄の信用取引残高が、毎営業日公表されるようになりました。

今回変更されたのは信用取引の売買条件ではなく、信用取引残高の公表方法です。

比較項目変更前変更後
全銘柄の信用残高週1回毎営業日
信用買い残・売り残週単位の変化を確認日単位の変化を確認
信用倍率週単位で比較日単位で比較
株価・出来高との比較週次が中心日々の動きと比較可能

これまでは、週末の信用買い残が前週より増えたのか、減ったのかを確認するのが一般的でした。

しかし、週末時点ではほとんど変化がなくても、週の途中では信用買い残が大きく増減していた可能性があります。

今回の毎営業日公表によって、こうした途中経過も確認できるようになりました。

株価・出来高と組み合わせて検証する

信用買い残が増加したからといって、必ずしも株価が上昇するわけではありません。

重要なのは、株価が動いた日に信用買い残と売り残がどう変化し、その変化が当日の出来高に対してどの程度の規模だったのかという点です。

そこで今回は、制度変更前の9月25日を基準に、10月7日までの信用取引データを調査しました。

対象はソフトバンクグループ(9984)とフジクラ(5803)の2銘柄です。

実際に調べてみると、株価の動きと信用残高の変化が対照的な日が見つかりました。

なお、公表される信用残高は前営業日終了時点の情報であり、リアルタイムの売買状況ではありません。

また、信用残高の増減は建玉の純増減を示すものであり、その日の信用取引の売買総量とは異なります。

 

② ソフトバンクグループ(9984)|株価下落で信用買い残が423万株増加

10月2日に信用買い残が大幅増加

ソフトバンクグループ(9984)の信用取引残高を調査したところ、10月2日に大きな変化が確認できました。

この日の株価は前日比5.8%下落しましたが、信用買い残は423万株増加し、反対に信用売り残は約188万株減少しています。

まず、制度変更後の日々の動きを確認します。

日付株価前日比信用買い残の増減信用売り残の増減
9/28+1.5%▲66万株+37万株
9/29▲3.4%+225万株▲55万株
9/30+6.6%▲288万株+118万株
10/1+4.2%▲165万株+77万株
10/2▲5.8%+423万株▲188万株
10/5+3.0%▲197万株+36万株
10/6▲3.1%+235万株▲52万株
10/7+0.2%▲104万株+7万株

※信用残高は前営業日比。株数は万株単位で四捨五入。

株価が下落した9月29日、10月2日、10月6日には信用買い残が増加し、反対に株価が大きく上昇した9月30日や10月1日には減少していました。

この期間は、株価と信用買い残がおおむね逆方向に動く日が目立っています。

出来高と比較すると、どの程度の増加だったのか

10月2日の取引データを詳しく確認します。

確認項目10月2日の数値
株価終値6,310円
株価前日比▲5.8%
出来高5,983万5,800株
信用買い残の増加+423万株
信用売り残の減少▲188万4,400株
買い残増加幅÷出来高7.1%
売り残減少幅÷出来高3.1%

この日、約5,984万株の出来高に対して、信用買い残は423万株増加しました。

1日の出来高の約7.1%に相当する規模で、信用買い建玉が純増した計算です。

ただし、これは出来高の7.1%が信用買いだったという意味ではありません。あくまで信用買い残の純増加幅を、当日の出来高と比較した参考値です。

さらに、信用買い残が増加する一方で売り残が減少したことで、信用倍率は前日の4.35倍から7.15倍へ上昇しました。

週次データだけでは見えなかった変化

9月25日と10月2日の信用買い残を比較すると、次のようになります。

比較日信用買い残
9月25日3,044万8,600株
10月2日3,173万5,100株
1週間の増減+128万6,500株

週次データだけなら、1週間で約129万株の増加として確認されます。

しかし、日次データでは、10月1日に約165万株減少した後、翌2日に423万株増加していたことが分かります。

週次の増減だけを見ていては、この途中の大きな動きを把握できません。

今回の制度変更によって、株価が大きく動いた日に信用買い残と売り残がどのように変化したのか、これまでより細かく検証できるようになりました。

なお、信用残高の変化だけで株価変動の原因や今後の値動きを断定することはできません。

 

③ フジクラ(5803)|株価上昇の裏で信用買い残が275万株減少

9月30日に信用買い残が大幅減少

フジクラ(5803)の信用取引残高を調査したところ、ソフトバンクグループとは異なる動きが確認できました。

9月30日の株価は前日比5.9%上昇しましたが、信用買い残は約275万株減少し、反対に信用売り残は約94万株増加しています。

制度変更後の日々の動きを確認します。

日付株価前日比信用買い残の増減信用売り残の増減
9/28▲0.6%▲19万株▲15万株
9/29▲0.5%+63万株▲7万株
9/30+5.9%▲275万株+94万株
10/1+2.8%+16万株▲5万株
10/2+4.3%▲122万株+31万株
10/5▲0.6%+134万株▲24万株
10/6+5.2%▲180万株+117万株
10/7▲2.7%+74万株▲63万株

※信用残高は前営業日比。株数は万株単位で四捨五入。

特に注目したいのは9月30日と10月6日です。

いずれも株価が5%以上上昇するなかで、信用買い残が減少し、信用売り残が増加していました。

また、10月7日は反対に株価が下落する一方で、信用買い残が増加しています。

この期間は、株価の上昇日に信用買い残が減少する動きが複数回確認できました。

出来高と比較すると、どの程度の減少だったのか

9月30日の取引データを詳しく確認します。

確認項目9月30日の数値
株価終値5,224円
株価前日比+5.9%
出来高3,887万5,400株
信用買い残の減少▲274万6,100株
信用売り残の増加+93万8,000株
買い残減少幅÷出来高7.1%
売り残増加幅÷出来高2.4%

この日、約3,888万株の出来高に対して、信用買い残は約275万株減少しました。

1日の出来高の約7.1%に相当する規模で、信用買い建玉が純減した計算です。

一方、信用売り残は約94万株増加しており、出来高の2.4%に相当します。

これにより、信用倍率も大きく変化しました。

日付信用倍率
9月29日28.07倍
9月30日11.64倍

わずか1営業日で、信用倍率は28.07倍から11.64倍へ低下しています。

信用買い残の減少と信用売り残の増加が同時に発生したことが、信用倍率の大幅な低下につながりました。

なお、出来高に対する割合は信用残高の純増減を比較した参考値であり、実際の信用取引の売買割合を示すものではありません。

週次データでは見えにくかった信用倍率の急変

9月25日と10月2日の信用買い残を比較すると、次のようになります。

比較日信用買い残信用倍率
9月25日2,291万4,700株21.92倍
10月2日1,955万4,400株9.64倍
1週間の買い残増減▲336万300株―

週次データだけでも、信用買い残が約336万株減少し、信用倍率が大幅に低下したことは確認できます。

しかし、日次データを確認すると、そのうち約275万株が9月30日のわずか1日で減少していたことが分かります。

さらに、この日は株価が5.9%上昇していました。

このように、株価の動きと信用取引残高を日ごとに比較することで、週次データだけでは把握しにくかった信用需給の変化を確認できます。

ただし、信用買い残の減少が株価上昇の原因だったとは断定できません。また、信用倍率の低下だけで今後の株価上昇が保証されるわけでもありません。

 

④ 2銘柄の比較で分かった、信用残の毎日公表の活用法

株価が大きく動いた日の信用残を比較

ソフトバンクグループとフジクラでは、株価が大きく変動した日の信用取引残高に、対照的な動きが見られました。

それぞれの特徴的な1営業日を比較します。

比較項目ソフトバンクG(9984)フジクラ(5803)
対象日10月2日9月30日
株価前日比▲5.8%+5.9%
出来高5,984万株3,888万株
信用買い残増減+423万株▲275万株
信用売り残増減▲188万株+94万株
買い残増減幅÷出来高7.1%7.1%
前営業日の信用倍率4.35倍28.07倍
当日の信用倍率7.15倍11.64倍

※株数は万株単位で四捨五入。出来高に対する割合は信用買い残の純増減幅との比較値。

両銘柄とも、1日の出来高に対して約7.1%に相当する信用買い残の変化が発生していました。

しかし、その内容は大きく異なります。

ソフトバンクグループでは株価下落とともに信用買い残が増加し、フジクラでは株価上昇とともに信用買い残が減少しました。

同じ規模の信用残高の変化でも、株価や信用売り残と組み合わせることで、異なる需給状況が見えてきます。

信用残を投資判断に活用する3つのポイント

今回の検証から、日次データを確認する際には、次の3点が重要と考えられます。

確認するポイント読み取れること
① 株価と信用買い残の増減株価下落時に買い建玉が積み上がっているか、上昇時に整理が進んでいるか
② 信用売り残と信用倍率買い建玉と売り建玉のバランスがどの程度変化したか
③ 出来高との比較と継続性当日の取引規模に対する残高変化の大きさと、その動きが一時的か継続的か

特に注意したいのは、信用買い残が増加した場合です。

信用買いは将来の返済が必要な取引であるため、買い残の積み上がりは、その後の売り圧力につながる可能性があります。

反対に、信用買い残が減少していれば、建玉の整理が進んでいる可能性があります。

ただし、これらは今後の株価を予測できるという意味ではありません。

1日だけの変化で判断せず、数営業日の動きと株価・出来高を組み合わせて確認することが重要です。

日次公表で増えたのは「判断材料」

今回の制度変更によって、信用取引残高の変化を週末まで待たずに確認できるようになりました。

例えば、株価が急落した銘柄について、信用買い残が大幅に積み上がっているのか、それとも整理が進んでいるのかを、翌営業日以降のデータで確認できます。

ただし、信用残高はリアルタイムの情報ではなく、信用残高と株価の動きだけで売買タイミングを決定することもできません。

企業業績やIR、株価水準といった基本的な判断材料に加え、信用需給を確認するための新しい情報として活用することが、今回の日次公表の意義といえそうです。

 

⑤ まとめ|信用残の毎日公表は投資判断に役立つのか

2026年9月28日の信用取引制度変更から10日が経過し、ソフトバンクグループとフジクラの日次データを検証しました。

今回の調査で分かったのは、週次データでは見えにくかった信用残高の急激な増減を、株価や出来高と組み合わせて確認できるようになったことです。

検証結果を整理します。

確認項目今回の検証結果
ソフトバンクG(9984)株価下落日に信用買い残が423万株増加
フジクラ(5803)株価上昇日に信用買い残が275万株減少
出来高との比較両銘柄とも特徴的な日の買い残増減幅は出来高の約7.1%相当
信用倍率1営業日で大きく変動する事例を確認
投資判断への活用信用需給の変化を早期に把握する参考材料になる

ただし、信用残高の増減だけで今後の株価を予測することはできません。

日次公表の価値は、売買の正解が分かることではなく、株価が動いた背景を考えるための判断材料が増えたことにあります。

私の意見

私は、今回の制度変更は現物株を中心に投資する人にとっても、十分に活用する価値があると考えています。

特に注目したいのは、株価が大きく下落したときです。

株価が安くなったからといって、すぐに買うのではなく、信用買い残が急増していないかを確認する。買い残が積み上がっていれば、その後の戻り売りなどによって株価の上値が重くなる可能性も考えられます。

一方、株価が上昇しながら信用買い残が減少していれば、買い建玉の整理が進んでいるという点は評価できます。ただし、信用売り残の動きも含めて判断する必要があります。

もちろん、私の投資判断の基本は企業の業績・財務・株価水準です。信用残高は、それらに代わるものではありません。

それでも、購入を検討している銘柄の信用需給を毎日確認できるようになったことは、これまでになかったメリットです。

私なら、企業IRで投資価値を判断したうえで、信用残高・出来高・株価の変化を確認し、購入タイミングを慎重に見極めるための補助指標として活用します。

今後も日次データを継続して確認し、信用残高の変化がその後の株価にどのような影響を与えるのか、実際の数字をもとに検証していきたいと思います。


※本記事は2026年10月8日時点で確認できる公表データ(信用取引残高は10月7日分まで)をもとに作成しています。信用残高は将来の株価を保証する指標ではありません。

※本記事は特定銘柄の購入を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

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マッスルトレーダーベイマックス
プライム企業で34年勤務(設備系管理職) 筋トレをこよなく愛するサラリーマン 2010年から株式投資を開始し、配当と株主優待を中心に多数保有 年間1000万円の配当収入を目標に、仕事と投資の両立を実践中 元現場管理のリアルな視点で、投資にも「地に足の着いた考え方」を持ち込みたいと考えています 。 保有資格 FP3級