2026年10月30日、キオクシアホールディングス(285A)が2027年3月期の中間決算を発表しました。

売上収益は約4兆2,472億円、純利益は約2兆1,979億円。前年同期と比較すると、純利益は約37倍という驚くべき数字です。

さらに、上場後初めてとなる中間配当も発表。株式分割後に換算すると1株30円です。

これだけの好材料がそろえば、株価も大きく上昇するのでは?

そう思いますよね。

しかし、実際には10月30日の株価は7%以上下落。さらに決算発表後のPTS(夜間取引)でも売りが先行しました。

好決算なのに、なぜ株価は下がるのでしょうか?

私が特に気になったのは、第3四半期(10~12月)の業績見通しが、第2四半期とほぼ横ばいになっていることです。

これは成長鈍化の兆しなのか。それとも、売上計上のタイミングによる一時的な谷間なのでしょうか?

さらに、今回発表された初配当30円には、どのような意味があるのでしょうか。

今回は決算短信だけでなく、経営陣の説明や株主還元方針も確認し、株価下落の背景と今後の成長性を検証します。

そして最後に、キオクシアを保有している私自身が、今後も保有を続けるのか、それとも買い増しを検討するのか。

その判断についてもお伝えしたいと思います。

 

① 2027年3月期中間決算|純利益37倍の好決算を確認

売上収益は5.4倍、純利益は約37倍に急拡大

まずは、2026年10月30日に発表された中間決算を確認してみましょう。

今回の決算は、2026年4月から9月までの6か月間の業績です。

前年同期との比較はこちら。

項目前年中間期今回中間期前年同期比
売上収益7,911億円4兆2,472億円約5.4倍
営業利益1,308億円3兆2,647億円約25倍
税引前利益840億円3兆2,034億円約38倍
純利益589億円2兆1,979億円約37倍
営業利益率16.5%76.9%大幅改善

※億円未満を四捨五入。純利益は親会社の所有者に帰属する中間利益です。

数字を見て驚きました!

売上収益は前年同期の約5.4倍、営業利益は約25倍です。

さらに、売上収益に対する営業利益率は76.9%。

売上100円に対して、約77円の営業利益を稼いでいる計算になります。

これだけの利益率は、非常に高い水準ですね。

ただし、ここで注意したいのは、今回の利益水準が今後も続くと決まったわけではないということです。

半導体メモリは、需要と供給のバランスによって販売価格が大きく変動します。

今は非常に好調でも、将来の供給増加や需要の変化によって利益率が低下する可能性があります。

なぜこれほど利益が増えたのか?

今回の好決算を支えたのは、主に次の3つです。

  • 生成AIを中心としたデータセンター向け需要の拡大
  • NAND型フラッシュメモリの平均販売単価の大幅な上昇
  • 記憶容量ベースでの出荷量の増加

特に大きいのが、販売単価の上昇です。

メモリメーカーにとって、製品の販売価格が上がることは利益に大きく影響します。

しかも今回は、価格だけでなく出荷量も増えています。

つまり、高い価格で、より多くの製品を販売できたことが、今回の大幅増益につながったということですね。

一方、スマートフォンやPC向けの需要には鈍化傾向も見られます。

すべての市場が好調というわけではありません。

今後もデータセンター向け需要が、他の市場の弱さを補えるかが重要になりそうです。

第2四半期だけでも利益が大きく増加

もう少し詳しく、4~6月と7~9月の業績を比較してみます。

項目1Q(4~6月)2Q(7~9月)
売上収益1兆7,671億円2兆4,800億円
営業利益1兆2,700億円1兆9,947億円
純利益8,422億円1兆3,557億円

2Qの売上収益は、1Qから約40%増加しています。

営業利益も約57%増加しました。

中間決算全体が好調なだけでなく、直近の7~9月も業績が大きく伸びているんですね。

これは評価できるところです。

さらに、7月時点に会社が示した中間期の業績予想と比較しても、売上収益は約2.2%、営業利益は約3.3%上回りました。

会社予想を超える決算だったことも確認できます。

私の評価|業績は文句なし。ただし株価の評価は別

今回の中間決算について、私は非常に高く評価しています。

特に、販売単価の上昇と出荷量の増加が同時に起きていることは好材料です。

また、1Qから2Qにかけて利益がさらに拡大している点も評価できます。

しかし、ここで一つ気になることがあります。

これだけの好決算を発表したのに、第3四半期の業績見通しは第2四半期とほぼ同じ水準なんです。

2Qまでの勢いを考えると、もう少し成長を期待したくなりますよね。

これは業績拡大が一服する兆しなのでしょうか?

それとも、一時的な売上計上のタイミングや為替の影響なのでしょうか?

次は、今回の決算で私が最も注目した**「3Qの谷間」**について、会社側の説明を詳しく確認していきます。

 

② 第3四半期の「谷間」はなぜ?業績鈍化の理由を検証

3Qの業績予想は2Qとほぼ横ばい

今回の決算で、私が最も気になったのが第3四半期(10~12月)の業績予想です。

まずは、第2四半期の実績と比較してみましょう。

項目2Q実績3Q会社予想増減率
売上収益2兆4,800億円2兆5,000億円+1%
営業利益1兆9,883億円2兆円+1%
税引前利益1兆9,612億円1兆9,850億円+1%
純利益1兆3,486億円1兆3,650億円+1%

※利益はNon-GAAP(会社が一部の特殊要因などを調整した指標)で比較。純利益は親会社所有者帰属利益です。

2Qは売上収益が前四半期比約40%増、営業利益も約50%増と、非常に勢いのある決算でした。

ところが、3Qの会社予想は売上収益も利益もわずか1%増です。

これは気になりますよね。

これほど好調な半導体市況なのに、なぜ急に成長が落ち着くのでしょうか?

ただし、ここで誤解してはいけないことがあります。

3Qは減収減益の予想ではありません。過去最高の業績をさらに更新する見通しです。

問題は業績が悪いことではなく、2Qまでの急成長と比べると、伸び率が大幅に鈍化することなんですね。

では、その理由を確認してみましょう。

経営陣が説明した「2Qへの前倒し」と「4Qへの繰り延べ」

10月30日の決算説明会では、この3Qの見通しについて経営陣が説明しています。

その内容を整理すると、主に2つの理由がありました。

1つ目は、旺盛な需要を受けて、一部の出荷が2Qに前倒しされたこと。

顧客からの需要が非常に強く、対応できる製品については2Qに出荷したため、3Qの出荷量がその分増えにくくなっています。

2つ目は、データセンター向け製品の増加によって、一部の出荷が4Qへずれること。

データセンター・エンタープライズ向け製品は、製造から出荷までに時間がかかる製品もあります。

製品構成がこうした分野へ変化しているため、本来3Qに見込んでいた一部の出荷・売上計上が4Qへ移るという説明です。

つまり、会社の説明を整理すると次のようになります。

四半期出荷・売上への影響
2Q(7~9月)強い需要に対応し、一部を前倒し
3Q(10~12月)2Qへの前倒しと4Qへのずれで伸びが鈍化
4Q(1~3月)3Qからずれた製品の出荷などで再加速を見込む

こう考えると、3Qの成長鈍化は需要がなくなったからではなく、出荷のタイミングが影響している可能性があります。

これは重要な違いですね。

ただし、4Qへの繰り延べ分がすべて予定どおり売上に計上されるかは、今後確認する必要があります。

為替の影響も3Qの増益を抑える

もう一つ確認したいのが為替です。

今回の会社予想では、2Q実績と3Q見通しで想定為替レートが異なっています。

項目2Q実績3Q想定
1ドル当たりの為替レート161円157円
円高方向への変化—4円

キオクシアは海外向けの売上が多いため、円高になると円換算した売上や利益を押し下げる要因になります。

会社の説明では、今回の為替前提によって営業利益に約550億円のマイナス影響を見込んでいます。

つまり、為替の影響がなければ、3Qの利益成長はもう少し大きくなる可能性があるということですね。

ただし、実際の為替相場が会社の想定どおりになるとは限りません。

ここも今後の決算で確認したいところです。

4Qに再び成長が加速するという会社の見通し

今回の説明会で、経営陣は4Qに向けて成長が再加速するという見方を示しました。

その背景には、データセンター向けの旺盛な需要と、出荷時期のずれがあります。

さらに、会社は2027年の生産能力について、すでに顧客への割り当てが完了していると説明しています。

2028年についても、複数年の長期供給契約によって、出荷量の相当部分をカバーできる見通しです。

これは今後の成長を考えるうえで、前向きな材料だと思います。

しかし、私はここで安心しきるつもりはありません。

なぜなら、4Qの再加速は、現時点では会社の見通しであって、確定した業績ではないからです。

顧客の需要が強くても、生産や出荷が予定どおり進まなければ、売上計上がさらに遅れる可能性があります。

また、半導体メモリの販売価格が現在のような高水準で上昇し続ける保証もありません。

今後は、出荷量だけでなく、平均販売単価と利益率が維持できるかも重要ですね。

私の評価|3Qの谷間は一時的と考えるが、4Qの確認は必要

今回の説明を聞いて、私は3Qの成長鈍化が直ちに業績悪化を意味するものではないと考えています。

理由は、会社が需要の減少ではなく、出荷時期や製品構成の変化を説明しているからです。

さらに、為替による約550億円のマイナス影響を織り込んでも、3Qの営業利益は過去最高を更新する見通しです。

ここは評価できます。

ただし、投資家として確認したいことがあります。

それは、4Qで本当に売上と利益の成長が再加速するのかという点です。

2Qの好決算が素晴らしかったことは間違いありません。

しかし、株価を考えるときに重要なのは過去の実績だけではなく、これからどれだけ利益を伸ばせるかです。

私は、現時点では3Qの谷間を過度に悲観していません。

一方で、4Qの回復を先取りして株価が割安だと判断するのも早いと思っています。

次は、キオクシアの成長が2027年、2028年まで続くのか。

生産能力の割り当てと長期供給契約から、今後の成長性を確認していきます。

 

③ 2027年の生産枠はすでに完売?2028年の長期契約から成長性を検証

2027年の生産能力はすでに割り当て済み

今回の決算説明会で、私が3Qの業績見通し以上に注目した発言があります。

それは、2027年の生産能力について、顧客への割り当てがすでに完了しているという説明です。

簡単に言えば、来年生産する予定の製品について、すでに販売先が決まっているということですね。

半導体メモリは、需要と供給のバランスによって価格が大きく変動する業界です。

需要が減少すれば、販売価格が下がり、利益が急激に悪化することもあります。

しかし、今回のキオクシアは違います。

会社は2027年の生産枠がすでに割り当て済みで、非常に強い需要が続いていると説明しています。

これは今後の業績を考えるうえで、かなり心強い材料ですね。

ただし、ここで注意したいことがあります。

生産枠の割り当てが終わっていることと、販売価格や利益まで確定していることは別です。

実際の売上や利益は、製品の販売価格、出荷量、製造コストなどによって変わります。

そのため、2027年の業績がすでに保証されたと考えるのは早いと思います。

2028年も出荷量の50%超を長期契約でカバー

さらに驚いたのが、2028年についての説明です。

会社は、2028年の出荷量についても、複数年の長期供給契約(LTA)によって50%を超える部分をカバーしていると説明しました。

LTAとは、顧客と複数年にわたる供給について取り決める長期契約のことです。

今回の発表内容を整理してみます。

対象年会社の説明
2027年生産能力の顧客割り当てが完了
2028年出荷量の50%超を複数年の長期契約でカバー
2029~2030年主要顧客との長期的な取引について協議を開始

※いずれも暦年(1~12月)の話であり、2027年3月期などの会計年度とは異なります。また、2028年の50%超は販売金額ではなく、ギガバイト換算の出荷量を指します。

これは評価できる内容だと思います。

通常、半導体メモリの需要は数年先まで正確に予測することが難しいものです。

それにもかかわらず、2028年の出荷量の半分以上について、すでに長期契約による見通しが立っています。

顧客側も、それだけ将来の半導体メモリを必要としているということでしょう。

ただし、ここでも私は一つ気になることがあります。

それは、長期契約の販売価格がどのように決まるのかという点です。

例えば、現在の高い販売価格が長期間維持されるのであれば、利益の安定につながる可能性があります。

しかし、市況に合わせて価格を見直す契約であれば、将来の利益は変動します。

今回確認できた資料では、長期契約の具体的な価格条件までは分かりません。

したがって、契約済みだから高収益が続くと断定することはできませんね。

AI向け需要が今後の成長を支える

では、なぜこれほど先の生産枠まで需要があるのでしょうか?

大きな理由の一つが、AIデータセンター向けの需要拡大です。

AIの利用が広がると、大量のデータを高速に保存・読み出しするためのストレージが必要になります。

そこで重要になるのが、キオクシアが手掛けるNAND型フラッシュメモリです。

会社は、2027年のNAND市場全体について、記憶容量ベースの出荷量が20%台前半の成長になると予想しています。

キオクシア自身も、市場と同程度の出荷量成長を見込んでいます。

また、データセンター向け需要が、スマートフォンやPC向け需要の弱さを補うと説明しています。

これは今後の成長を考えるうえで、重要な変化ですね。

ただし、AI向け需要が強いからといって、すべての製品の販売価格が上がり続けるわけではありません。

スマートフォンやPC向けの需要が想定以上に悪化すれば、業績に影響する可能性もあります。

今後はAI向け需要だけでなく、市場全体の需給バランスも確認していきたいと思います。

生産能力の拡大には大規模な設備投資も必要

需要が強いのであれば、もっと生産すれば利益が増えるのでは?

そう考えたくなりますよね。

しかし、半導体メモリの生産能力を増やすには、多額の設備投資が必要です。

キオクシアは2026年8月、サンディスクと共同で、2032年までに日本国内で総額約5兆円の投資を見込むと発表しています。

また、北上工場では新たな製造棟「K3棟」の整備を進め、2029年度中の稼働開始を目指しています。

その前には、既存の四日市工場Y7棟や北上工場K2棟を活用し、生産能力を拡大する方針です。

ただし、約5兆円は両社による2032年までの投資計画であり、キオクシアが単独で負担する金額ではありません。

それでも、大規模な設備投資が必要なことに変わりはありませんね。

需要が強い間は積極的な投資が成長につながります。

しかし、将来の需要が想定を下回れば、新たな設備が負担になる可能性もあります。

私は、生産能力をどれだけ増やすかだけでなく、その投資によってどれだけ利益と現金を生み出せるかを重視したいと思います。

私の評価|2028年までの需要は心強い。ただし株価が割安とは限らない

今回の決算説明会で、私はキオクシアの中長期的な成長性を改めて評価しました。

2027年の生産能力はすでに割り当て済み。

2028年も出荷量の50%超を長期契約でカバーしています。

これは、今後の需要について一定の見通しが立っていることを示す好材料です。

特に、データセンター向け需要が今後も拡大するのであれば、キオクシアにとって大きな成長機会になると思います。

しかし、私はここで買い増しを判断するつもりはありません。

理由は、将来の出荷量が見えていても、販売価格や利益率まで確定しているわけではないからです。

さらに、今後は大規模な設備投資も必要になります。

企業の成長性が高いことと、現在の株価が割安であることは別です。

今後は、2027年の販売単価がどの程度維持されるのか、2028年の長期契約が利益の安定につながるのかを確認したいですね。

私は現時点では保有を継続し、買い増しについては慎重に判断したいと考えています。

次は、今回の決算で発表された上場後初の中間配当30円と株主還元方針について詳しく確認します。

巨額の自社株買いを実施したキオクシアが、なぜ今回、初配当を決めたのでしょうか?

その背景を調べていきます。

 

④ 初配当30円は少なすぎる?好決算でも大幅配当できない理由を検証

純利益約2兆2,000億円なのに、初配当は30円

今回の決算で、株主として少し物足りなく感じたのが配当金です。

キオクシアは2026年10月30日、上場後初となる中間配当を発表しました。

内容はこちらです。

項目内容
中間配当90円(株式分割前)
分割後換算30円
配当総額約479億円
配当基準日2026年9月30日
支払開始日2026年12月8日
期末配当予想未定

※2026年10月1日に1株を3株へ分割しているため、現在の株数では30円に相当します。

今回の中間純利益は約2兆2,000億円です。

それなのに、1株当たりの配当金は30円。

10月30日の終値13,470円に対して、今回の中間配当だけを比較した利回りは約0.22%です。

これを見て、「もう少し配当を増やしてほしい」と感じた株主も多いのではないでしょうか。

私も最初はそう思いました。

しかし、企業の財務を調べると、今回の30円という配当金額には事情がありそうです。

利益が大きく増えたからといって、その利益をすべて配当に回せるわけではないんです。

なぜ2兆円の利益があっても配当を増やせないのか?

ここで知っておきたいのが、会社法の「分配可能額」という仕組みです。

簡単に言うと、会社は利益が出たからといって、好きなだけ株主に配当できるわけではありません。

配当できる金額には法律上の制限があります。

そして、その金額を計算するときに重要なのが、連結決算ではなく、配当を支払う会社自身の単体決算です。

今回、約2兆2,000億円の純利益を計上したのは、キオクシアグループ全体の連結決算です。

一方、株主へ配当するのはキオクシアホールディングスという持株会社です。

この違いが重要なんですね。

例えば、子会社が多額の利益を稼いでいても、その利益がそのまま持株会社の配当可能額になるわけではありません。

子会社から配当を受け取るなどして、持株会社側にも配当に使える剰余金を確保する必要があります。

では、キオクシアの持株会社には、どの程度の剰余金があったのでしょうか?

持株会社単体の剰余金と8,000億円の自社株買い

2026年3月期の有価証券報告書を確認してみました。

そこには、キオクシアホールディングス単体の財務数値が記載されています。

項目2026年3月末
その他資本剰余金約7,724億円
繰越利益剰余金約908億円
上記2項目の合計約8,632億円

この約8,632億円という金額が、今回の配当を考えるうえで重要になります。

ただし、これは単体決算の2項目を合計した数字であり、会社法上の正式な分配可能額そのものではありません。

そして、キオクシアは2026年8月に約8,000億円の自社株買いを実施しています。

自社株買いも、法律上の分配可能額に制約を受ける取引です。

つまり、株主還元として約8,000億円もの資金を使ったことで、その後の配当に使える余力にも影響するんですね。

3月末時点の上記剰余金から、単純に自社株買いの8,000億円を差し引くと、約632億円です。

今回の配当総額は約479億円。

こうして数字を比較すると、30円という配当金額は、決して小さな株主還元ではないことが分かります。

ただし、ここは誤解してはいけません。

3月末以降には子会社からの配当などもあり、正式な分配可能額にはさまざまな調整が必要です。

したがって、単純な引き算だけで「法律上、30円が上限だった」と断定することはできません。

それでも、持株会社の配当余力と、先に実施した巨額の自社株買いを考える必要があることは、公式資料から確認できます。

自社株買い8,000億円も株主還元の一つ

今回の配当だけを見ると、物足りなく感じるかもしれません。

しかし、キオクシアはすでに約8,000億円の自社株買いを実施しています。

今回の中間配当と合わせてみましょう。

株主還元金額
2026年8月の自社株買い約8,000億円
今回の中間配当約479億円
合計約8,479億円

この数字を見ると、印象が変わりませんか?

確かに、私たち株主が直接受け取る配当は30円です。

しかし、会社はそれ以前に約8,000億円を使って自社株式を買い戻しています。

私は、今回の株主還元を配当30円だけで評価するのは適切ではないと思います。

ただし、自社株買いには注意点もあります。

自社株買いは株価の下支えにつながる可能性がありますが、必ず株価が上昇するわけではありません。

また、買い戻した株式を消却するかどうかによっても、将来の1株当たり指標への影響は変わります。

それでも、会社が配当と自社株買いの両方を実行したことは評価したいですね。

今後は累進配当と余剰資金100%還元へ

さらに、今回のIRで注目したいのが新しい株主還元方針です。

会社は、累進配当と機動的な自社株買いを基本方針とすると発表しました。

累進配当とは、原則として配当を維持または増額していく考え方です。

さらに、設備投資や研究開発、人的投資などに必要な資金を確保し、ネットキャッシュを維持したうえで、中長期的に余剰となった資金の100%を株主還元に充てる方針も示しています。

ここは重要ですね。

ただし、純利益の100%を配当するという意味ではありません。

キオクシアは今後も半導体の生産能力拡大に大きな設備投資を計画しています。

そのため、投資に必要な資金を確保した後に、どれだけ余剰資金が残るのかが重要になります。

また、会社が今回発表した30円は中間配当です。

期末配当は未定なので、年間60円になると決まったわけではありません。

今後も増配を続けられるかどうかは、利益だけでなく、持株会社の配当可能額やキャッシュフローを確認する必要があります。

私の評価|30円は物足りない。でも事情を理解すると評価は変わる

今回の中間配当30円について、株主としてはもう少し欲しいという気持ちがあります。

特に、純利益が約2兆2,000億円という好決算でしたから、そう感じるのも自然だと思います。

しかし、IRを確認すると、単純に利益が増えた分を配当に回せるわけではないことが分かりました。

持株会社単体の分配可能額という法律上の制限があり、さらに約8,000億円の自社株買いも実施しています。

今回の30円が法律上の限界だったとまでは確認できませんが、私は、こうした制約を考慮して配当額を決めた可能性があると考えています。

そして、今回新たに累進配当を基本方針としたことは、長期保有を考えるうえで前向きな材料です。

私は、今回の30円という金額だけでキオクシアを低く評価するつもりはありません。

むしろ、今後の利益成長によって持株会社の配当余力が増えれば、将来的な増配の可能性も広がると期待しています。

ただし、現時点で高配当株として評価できるわけではありません。

初配当は評価しますが、それだけで買い増しを判断するのは早いと思います。

次は、今回の好決算や中長期的な成長性を考慮したうえで、現在の株価13,470円は割安なのか。

PER・PBR・財務・今後の利益見通しから、私自身の投資判断を整理していきます。

 

⑤ キオクシアの株価13,470円は割安?好決算でも買い増しを急がない理由

好決算なのに株価は7%以上下落

2026年10月30日、キオクシアの株価は前日比1,035円安の13,470円で取引を終えました。

下落率は約7.1%です。

これだけの好決算を発表したのに、なぜ株価が下がるのでしょうか?

まず、ここで確認しておきたいことがあります。

今回の決算が発表されたのは、10月30日の18時45分です。

つまり、同日の7.1%下落は決算発表前の値動きなんですね。

今回の好決算を受けて株価が7%下落した、という説明は正しくありません。

ただし、決算発表後の夜間PTS取引でも株価は下落しました。

これは気になりますね。

好決算で初配当も発表したのに、なぜ買いが集まらなかったのでしょうか?

私は、その理由の一つが、第3四半期の業績見通しにあると考えています。

3Qの会社予想は市場の期待を下回っていた

今回の決算を評価するときに重要なのが、市場の事前予想との比較です。

会社が発表した3Q(10~12月)の見通しと、決算発表前のアナリスト予想を比較してみましょう。

項目3Q会社予想市場予想
売上収益2兆5,000億円約2兆8,322億円
営業利益1兆9,950億円約2兆3,386億円
純利益1兆3,600億円約1兆5,926億円

※市場予想は2026年10月29日時点のIFISコンセンサス。3か月間の業績を比較。純利益は親会社所有者帰属利益です。

いかがでしょうか?

会社の売上予想は、市場予想より約3,300億円低い数字です。

営業利益も約3,400億円、純利益も約2,300億円下回っています。

つまり、今回の決算は非常に好調だったものの、市場はそれ以上の成長を期待していたということですね。

株価は過去の業績だけではなく、将来の期待によっても動きます。

好決算でも、将来の見通しが市場の期待より低ければ、売られることがあります。

私は、今回の夜間取引で売りが出た背景には、この期待との差があると考えています。

ただし、株価下落の理由をこれだけで断定することはできません。

また、②で確認したとおり、会社は3Qの伸びが鈍化する理由として、出荷時期の前後ずれや為替の影響を説明しています。

そのため、私は今回の3Q見通しだけで、今後の成長が止まると判断するつもりはありません。

PERは何倍?今の利益だけなら割安にも見える

では、株価13,470円は割安なのでしょうか?

私が普段、銘柄選びで最初に確認するのはPERです。

目安は10倍以下。

しかし、キオクシアは2027年3月期の通期業績予想を発表していません。

そのため、会社の通期予想EPSを使ったPERは、現時点では計算できません。

そこで、今回の決算から確認できる数字を整理してみます。

項目内容
10月30日終値13,470円
中間期の1株当たり利益1,349.33円
3Q累計の純利益予想約3兆5,579億円
時価総額約21.5兆円

※時価総額は10月30日終値と9月末の自己株式控除後株数から計算した概算です。

ここで興味深いのが利益の大きさです。

すでに中間期だけで約2兆2,000億円の純利益を計上しています。

そして、3Qまでの累計純利益は約3兆5,579億円を見込んでいます。

この利益が4Qでも大きく伸びるのであれば、現在の株価が割安に見えるのも理解できます。

ただし、私はここで慎重に考えたいと思います。

半導体メモリは、需要と供給によって販売価格が大きく変動する事業だからです。

現在の高い利益率が、今後何年間も続くとは限りません。

将来の利益が減少したらPERはどう変わる?

ここで、今後の年間純利益が変化した場合のPERを試算してみます。

時価総額を約21.5兆円として計算した結果です。

仮定する年間純利益PERの概算
5兆円約4.3倍
3兆円約7.2倍
2兆円約10.8倍
1兆円約21.5倍

※これは今期の会社予想ではありません。好況が落ち着いた後の年度も含め、将来の利益水準を仮定した試算です。

もし年間5兆円の純利益を安定して稼げるのであれば、現在の株価はかなり割安に感じます。

しかし、利益が2兆円まで減少すればPERは約10.8倍。

さらに1兆円になれば、約21.5倍になります。

同じ株価でも、企業が稼ぐ利益によって評価は大きく変わるんですね。

だからこそ、私は現在の好決算をそのまま将来に当てはめるのは危険だと思います。

大切なのは、今いくら稼いでいるかだけでなく、その利益を何年維持できるかということです。

今回の長期供給契約は、その点で非常に心強い材料です。

ただし、販売数量と販売価格は別の問題なので、将来の利益まで確定しているわけではありません。

PBRは約7.35倍!財務の改善は評価できる

次にPBRを確認してみましょう。

2026年9月末の親会社所有者に帰属する持分は約2兆9,290億円。

自己株式を除いた発行済株式数から計算すると、1株当たり純資産は約1,833円です。

10月30日の株価13,470円で計算したPBRは約7.35倍となります。

私が普段調査のきっかけにしているPBR1倍割れとは、大きな差がありますね。

ただし、PBRが高いからといって、それだけで割高と決めつけることもできません。

今のキオクシアは、純資産に対して非常に大きな利益を生み出しています。

その高い収益力が続くのであれば、PBRが高くなることにも一定の理由があります。

一方、その利益が将来大幅に減少するのであれば、現在の高いPBRが株価の重荷になる可能性もあります。

では、財務そのものはどうでしょうか?

項目2026年3月末2026年9月末
現金及び現金同等物約4,707億円約1兆3,973億円
親会社所有者帰属持分比率37.9%49.8%
親会社所有者帰属持分約1兆3,989億円約2兆9,290億円

財務は大幅に改善しています。

自己資本比率に相当する指標も49.8%となり、私の目安である50%にほぼ到達しました。

また、営業活動によるキャッシュフローは中間期で約2兆3,796億円です。

すでに約8,000億円の自社株買いを実施していますが、それでも現金残高は大きく増加しました。

これは評価できますね。

ただし、今後は法人税の支払いや大規模な設備投資も必要です。

現金残高が多いからといって、その全額を自由に株主還元へ使えるわけではありません。

私の判断|保有は継続。ただし買い増しには慎重

今回の決算を確認して、キオクシアの業績と成長性については、以前よりも前向きに評価しています。

特に、2027年の生産枠がすでに割り当て済みで、2028年も出荷量の50%超を長期契約でカバーしていることは、大きな好材料です。

また、財務が改善し、初配当と累進配当方針まで発表されたことも評価できます。

しかし、現在の株価が明確に割安かというと、私はまだ判断できません。

3Qの会社予想は市場の期待を下回りました。

さらに、現在の高い利益率がどこまで続くのかも重要です。

今後、4Qで会社が説明した成長の再加速が実現すれば、現在の株価を見直す材料になると思います。

一方、販売価格や利益率が低下すれば、株価はさらに調整する可能性があります。

私は現在キオクシア株を保有していますが、現時点では保有を継続し、買い増しは見送る判断です。

業績が悪いからではありません。

むしろ業績は非常に好調です。

それでも、今の株価が将来の利益に対して十分に割安なのか、まだ確信を持てないからです。

今後は、4Qで本当に売上と利益が再加速するのか、2027年の高い需要が販売価格にも反映され続けるのかを確認したいと思います。

好決算だから買うのではなく、好決算を踏まえた株価が割安かどうかで判断する。

今回も、その考え方を大切にしたいと思います。

 

⑥ まとめ|キオクシアは好決算でも買い増しを見送る?私の投資判断

今回のキオクシアの中間決算は、非常に良い内容だったと思います。

売上収益は約4兆2,472億円、純利益は約2兆1,979億円。

前年同期と比較すると、純利益は約37倍に増加しました。

さらに、2027年の生産能力はすでに顧客への割り当てが完了し、2028年も出荷量の50%超が長期契約でカバーされています。

AIデータセンター向けの強い需要が、今後の成長を支える可能性は十分にあると感じます。

今回の決算で確認した主なポイントを整理します。

評価項目確認できた内容私の評価
中間決算純利益約37倍高く評価
3Q業績予想2Qから成長率が鈍化4Qの回復を確認
2027年の需要生産能力の割り当て完了好材料
2028年の需要出荷量の50%超を長期契約でカバー好材料
初配当分割後換算30円還元開始を評価
自社株買い約8,000億円を実施株主還元を評価
財務親会社所有者帰属持分比率49.8%大幅改善
株価10月30日終値13,470円割安かは慎重に判断

私が今回の決算で最も評価したこと

私が特に評価しているのは、単に利益が大きく増えたことではありません。

2027年、2028年までの需要について、会社が具体的な見通しを示したことです。

半導体メモリは市況によって利益が大きく変動します。

その中で、数年先の出荷量について一定の見通しが立っていることは、以前よりも安心できる材料だと思います。

また、今回の初配当にも注目しています。

純利益が約2兆2,000億円もあるのに、配当は30円。

正直なところ、株主としてはもう少し欲しいと思いました。

しかし、調べてみると、持株会社単体の分配可能額という法律上の制限があり、さらに約8,000億円の自社株買いも実施しています。

今回の30円が法律上の限界だったとまでは確認できませんが、配当額を考えるうえで無視できない事情です。

そして、今後は累進配当を基本方針とし、中長期的な余剰資金を株主還元に充てる姿勢も示しました。

私は、今回の配当金額そのものよりも、キオクシアが今後の株主還元について明確な方向性を示したことを評価しています。

それでも私が買い増しを急がない理由

ここまで好材料を確認してきましたが、一つだけ気になることがあります。

それは、現在の株価が将来の利益に対して本当に割安なのか、という点です。

今回の中間決算は素晴らしい内容でした。

しかし、第3四半期の会社予想は市場の期待を下回っています。

会社は出荷時期の前後ずれなどを理由に説明していますが、4Qで本当に成長が再加速するのかは、まだ確認できていません。

さらに、今後の販売価格も重要です。

2027年の生産枠が割り当て済みでも、販売価格や利益率まで保証されているわけではありません。

現在の高い利益率が維持できるなら、株価13,470円は割安に見えるかもしれません。

しかし、メモリ市況が変化し、利益が大幅に減少すれば、株価の評価も変わります。

好決算だから株価が割安とは限らない。

私は今回、改めてそう感じました。

私の最終判断|保有継続、買い増しは見送り

私は現在、キオクシア株を保有しています。

今回の決算を確認して、保有を続ける理由は以前よりも強くなったと感じています。

業績は非常に好調で、将来の需要についても前向きな材料がそろっています。

財務も改善し、初配当と新しい株主還元方針も発表されました。

そのため、現時点では保有を継続します。

ただし、買い増しについては見送ります。

理由は、業績に不安があるからではありません。

現在の株価が、今後の利益成長をどこまで織り込んでいるのか判断するには、もう少し確認が必要だからです。

今後は、3Qの業績が会社予想どおりに進むのか、4Qで本当に成長が再加速するのか、そして2027年以降も高い販売価格と利益率を維持できるのかに注目します。

今回の決算は、キオクシアの成長力を改めて感じる内容でした。

だからこそ、期待だけで買い増すのではなく、業績と株価のバランスを慎重に見ていきたいと思います。

良い企業を見つけることと、良い価格で株を買うことは別。

これからも、その考え方を大切にしていきたいですね。

免責事項: 本記事は2026年10月30日に公表されたキオクシアの決算短信、決算説明資料、株主還元方針などを基にした筆者の個人的な見解です。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。業績見通しや長期供給契約に関する説明は将来の売上・利益を保証するものではなく、株価・業績・配当は変動する可能性があります。また、今回の中間配当30円が会社法上の分配可能額の上限だったことは確認できていません。投資判断は読者ご自身の責任でお願いいたします。

ABOUT ME
マッスルトレーダーベイマックス
プライム企業で34年勤務(設備系管理職) 筋トレをこよなく愛するサラリーマン 2010年から株式投資を開始し、配当と株主優待を中心に多数保有 年間1000万円の配当収入を目標に、仕事と投資の両立を実践中 元現場管理のリアルな視点で、投資にも「地に足の着いた考え方」を持ち込みたいと考えています 。 保有資格 FP3級